世界的な感染症の流行で、体温測定が日常的に行われるようになりました。特に額式体温計の普及により非接触体温計測はたいへん身近になりましたが、非接触の原理は?正確に測れるの?と様々な疑問が出てきたことだと思います。そこで、額式体温計などに使用されているサーモパイルセンサをはじめとした赤外線センサと非接触温度センシングについて、種類や原理についてご紹介します。
赤外線温度センサは熱エネルギーの移動を利用し、温度を測ります。
熱エネルギーの移動の種類は3つがあります。
①触って直接伝わる「伝導」 ②気体や液体を介する「対流」 ③赤外線による「放射」
非接触温度計測は③の赤外線による「放射」の原理を応用したものになります。
赤外線センサと一口に言ってもリモコンなどについている通信用の赤外線とは異なり、光というよりも熱に近い光を検出するものになります。
種類も様々ありますが原理的に2種類あり、量子型と呼ばれるものと熱型と呼ばれるものに分かれます。
量子型は赤外線を光として捉え、熱型は名前の通り赤外線を熱として捉えます。
赤外線温度センサの主な種類と特長
①量子型 :高感度、小型、高価
②熱型 :低感度、安価
1.サーミスタ(ボロメーター)型:温度変化を抵抗体の抵抗値変化で検知
2.サーモパイル型 :温度変化を熱電対の熱起電力で検知
3.焦電型 :温度変化を焦電効果で発生する電荷で検知
SEMITECの赤外線温度センサは熱型の赤外線センサでサーミスタ型とサーモパイル型をラインナップしています。それぞれの特長は下記になります。
・サーミスタ型 :出力信号が大きく耐熱温度高いが応答性が低い
・サーモパイル型:小型で応答性が高いが出力信号が小さい
つまり、非接触温度センシングを正確におこなうには、赤外線センサは元よりセンサ自身を測定する温度センサの性能も必要になります。非接触温度センシングのとき、測定対象物とセンサの間の赤外線エネルギーのやりとりにはステファン=ボルツマン則という関係式が成り立ちます。
ここで重要なのは、測定対象物によって赤外線に対する特性 =放射率 が変わることです。
SEMITECの赤外線センサは熱型のセンサで、熱電対を応用したサーモパイルセンサと独自の薄膜サーミスタを応用したNCセンサを非接触温度センサとしてラインナップしておりますが、どちらもセンサ自身を正確に測ることができる高精度のサーミスタを搭載しています。
V = α(Tb4‐Ts4)
V :サーモパイル出力 [mV]
α :係数
Tb :対象物体の絶対温度 [K]
Ts :センサ絶対温度[K]
応答が速く感度も高いのですが、出力信号が小さいので使用するには増幅回路を使います。また、出力特性にばらつきがあるため、体温計として使用するには調整が必要になります。
主に複写機等のOA機器で使用されており、世界で初めて量産に成功した薄膜サーミスタ※を応用したSEMITEC独自の非接触温度センサです。汚れに強く150℃の環境で使用でき、条件によっては増幅回路が不要といったメリットがあります。
※当社調べによる
このように、非接触温度センサはとても便利なもので、赤外線計測の原理やセンサの性能、使用環境を充分に考慮して使用すると正確な温度計測が可能になります。